奴隷の心得

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買い物を終えて帰り、夕飯を作り終えた時には結局8時を回っていた。 テーブルについた証は、黙々と柚子の作ったご飯を食べ始める。 (まずい……って言わないってことは、美味しいって思ってるってことよね……) 証の向かいに座った柚子は、黙って箸を動かす証を見つめた。 証のことだ。 少しでもまずいと思ったら、毒舌の限りを尽くして柚子をこき下ろすだろう。 「一人暮らしの割には綺麗にしてるのね」 部屋をぐるっと見渡しながらそう言うと、証は箸を止めて目を上げた。 「今までは週に二回、ハウスキーパーに掃除だけは来てもらってたからな」 「………へぇ」 「でも明日からはお前の仕事な」 味噌汁を啜りながら、証は柚子を見据える。 柚子はためらいがちに頷いた。 「………要するに、家事全般すればいいってこと?」 「差し当たってはな」 そこで証は強めに箸をテーブルに置いた。 どうやら完食したらしい。 「明日から、家の掃除と洗濯。あと俺の食事の用意。これは毎日しろ」 「………はい」 「予定は毎日言うから、俺が帰ってきた時は必ず家にいろ。俺より遅く起きるな、俺より早く寝るな」 「………………」 ………関白宣言かよ。 そのうちいつも綺麗でいろとか言い出すんじゃないだろうか。 柚子は気を取り直して姿勢を正した。 「……わかりました」 家事はずっとやっていたし嫌いじゃない。 それで一日10万貰えるなら安いものだ。 ………差し当たってという言葉が気になるが。  
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