47624人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
買い物を終えて帰り、夕飯を作り終えた時には結局8時を回っていた。
テーブルについた証は、黙々と柚子の作ったご飯を食べ始める。
(まずい……って言わないってことは、美味しいって思ってるってことよね……)
証の向かいに座った柚子は、黙って箸を動かす証を見つめた。
証のことだ。
少しでもまずいと思ったら、毒舌の限りを尽くして柚子をこき下ろすだろう。
「一人暮らしの割には綺麗にしてるのね」
部屋をぐるっと見渡しながらそう言うと、証は箸を止めて目を上げた。
「今までは週に二回、ハウスキーパーに掃除だけは来てもらってたからな」
「………へぇ」
「でも明日からはお前の仕事な」
味噌汁を啜りながら、証は柚子を見据える。
柚子はためらいがちに頷いた。
「………要するに、家事全般すればいいってこと?」
「差し当たってはな」
そこで証は強めに箸をテーブルに置いた。
どうやら完食したらしい。
「明日から、家の掃除と洗濯。あと俺の食事の用意。これは毎日しろ」
「………はい」
「予定は毎日言うから、俺が帰ってきた時は必ず家にいろ。俺より遅く起きるな、俺より早く寝るな」
「………………」
………関白宣言かよ。
そのうちいつも綺麗でいろとか言い出すんじゃないだろうか。
柚子は気を取り直して姿勢を正した。
「……わかりました」
家事はずっとやっていたし嫌いじゃない。
それで一日10万貰えるなら安いものだ。
………差し当たってという言葉が気になるが。
最初のコメントを投稿しよう!