悪夢の再会

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(今日も指名ナシ……か) 待機室で携帯をいじりながら、柚子(ゆずこ)は深い溜息をついた。 キャバ嬢として働き始めてから二週間、未だ本指名どころか場内指名も入らない。 見た目は悪くないと思うのだが、何が自分に足りないというのだろう。 そもそも人に媚びたり愛想を振り撒くということが苦手なタチで、それでも自分なりに頑張っているつもりなのだが。 (………どうしよ。このままじゃ予想以上にお金になんないよ。お水=高収入だと考えてたのが甘かったわ……) パチンと携帯を閉じ、柚子はチラッと店内に目を向けた。 No.1キャバ嬢の接客をじっと見つめる。 (あんな風にやってるつもりなんだけどな……) 再び溜息をついた時、ボーイが柚子を呼びに来た。 「ユズさーん。マリナさんのヘルプお願いしまーす」 「はーい」 ユズは柚子の源氏名である。 立ち上がり待機室を出ようとしたところで、ボーイがこそっと柚子に耳打ちした。 「よかったですね、ユズさん。当たりですよ」 「当たり?」 「新規のお客ですけど、有名な若社長らしいですよ。指名貰えたらいいですね」 「………頑張るわ」 素っ気なく答えて、柚子は待機室を後にした。  
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