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「えーーっ、そ、そうなんですか!? い、従兄弟同士!?」
「はい」
五十嵐は立ち上がった柚子に、優しく笑いかけた。
「社長の母親は社長を産んですぐに亡くなったんです。
柚子さんの言う通り、社長は……証は、小さい頃は泣き虫で寂しがり屋で。
でも父親はとても忙しい人で、兄弟もいなかったので、近所に住んでいた僕はよく証の面倒を見ていたんです。
もちろん、夜に一緒に寝ることもよくありました。
言うなれば、兄変わり……ですね」
「そ、そうだったんですか…」
つまり、証にとって眠っている時に横にいるのは五十嵐で……
寝ぼけてつい童心に返って、あんな行為をしてしまったということか……。
それなのにあらぬ誤解を自分はしてしまった……
カアッと柚子の顔が朱に染まった。
「だ、だったらそう言えばいいのに…っ」
「それは言えないでしょう」
五十嵐は口元に手を置き、クスクス笑った。
「いい年をして寝ぼけて従兄弟のお兄ちゃんに抱き着いたなんて……しかも『奴隷』の貴方には、ね」
「………………」
「貴方にそれを聞かれて、よほど恥ずかしかったのでしょうね。……きっと自分の口で説明するのが嫌で、僕をここへ寄越したんでしょう」
「………そこに裸エプロンは必要でしょうか」
「………まあ、子供じみた嫌がらせでしょうね」
五十嵐は苦笑しながら、静かにコーヒーに口を付けた。
柚子はぼんやりと五十嵐の顔を見つめる。
(………そっかぁ……。従兄弟だったんだぁ……)
ということは、やはり証はノーマルだということで……。
それなのに指一本触れられなかったのは、ひとえに証に女として見られていないということか。
(…………うーん、複雑……)
少し苦めのコーヒーを啜りながら、柚子はほっとしたようながっかりしたような不思議な気持ちに襲われていた。
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