奴隷の心得

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会社に戻った五十嵐は、そのまま真っ直ぐに社長室へ向かった。 ノックをしてから名乗ると、すぐにどうぞと返事が返ってきた。 「失礼します。ただいま戻りました」 「………随分のんびりしてたんだな」 パソコンに向かっていた証は、目を画面から外さずに言った。 五十嵐は肩をすくめる。 「………驚くことが多々ありましたので」 そこで証は手を止め、ゆっくりと五十嵐に視線を投げた。 五十嵐は歩を進めて証の前に立った。 「あの時のキャバ嬢を、奴隷として三千万で買われたそうですね」 「…………ああ」 表情を変えずに肯定し、証は煙草に火をつけた。 「しかもその理由が、幼稚園の時に虐められていた復讐……とか」 「………………」 「もしそれが本当なら……少しお遊びが過ぎるのでは?」 証は何も答えず、静かに煙を吐いた。 五十嵐は更に続けた。 「貴方はそんなことに金も時間も使うかたではない」 「………………」 「一体何を考えているのです?三千万まで出して何故彼女を……」 「五十嵐」 厳しい声で五十嵐の声を遮り、証は煙草を灰皿に押し付けた。 ゆっくりと立ち上がり、威圧的に五十嵐を見据える。 「お前は、俺の何だ?」 五十嵐は怯まず、真っ直ぐに証の目を見つめ返した。 「秘書です」 「………だったら、あまり出過ぎるな」 短く言い捨てると、証は再び椅子に腰を下ろした。 五十嵐は頭を下げる。 「申し訳ありませんでした」 「………………」 その後しばらく沈黙が流れた。  
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