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それから何やかやと雑務をこなし、証が家に着く頃には夜中の1時を回っていた。
とっくに柚子は先に寝ていると思っていたのだが、部屋の明かりが点いていることに気付いた証は急いで靴を脱いだ。
ダイニングに足を踏み入れ、立ちすくむ。
「…………………」
柚子はダイニングテーブルに突っ伏していた。
物音をたてないように側に歩み寄ると、柚子は腕を枕にしてスヤスヤと眠っていた。
本らしき物を下敷きにしている。
どうやら本を読んで証を待つうちに、待ち疲れて眠ってしまったらしい。
(……なんだこれ。……楽譜?)
証は柚子の下敷きになっている本に目を向けた。
柚子の体半分で隠されているのでよくわからないが、五線譜がチラリと垣間見えた。
(………そういやこいつ、なんか夢があるっつってたっけ……)
証は静かに柚子の横の椅子を引き、腰を下ろした。
証の席には皿が何枚か並べられている。
五十嵐の言う通り、証の分の夕飯も用意していたようだ。
証は柚子に視線を戻し、じっとその顔を見つめた。
口は軽く開けられ、スースーと寝息が漏れている。
夢を見ているのか、睫毛が小刻みに震えていた。
証は頬杖をつき、思わずのように呟いた。
「………寝顔は、昔と変わんねーのな………」
余り大きな声を出したつもりはなかったが、柚子の体がピクッと反応した。
うっすらと瞼が持ち上がる。
うたた寝をしていたことに気付き、柚子はガバッと半身を上げた。
それと同時に隣の証に気付く。
「………あれ、証。いつ帰ってきたの……」
「あれ、じゃねーよ。何やってんだ、てめぇは」
証は頬杖をついたまま呆れたように肩で息をついた。
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