奴隷の心得

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柚子は頭の中で言葉を整理しながら、父親が死んで会社が倒産したあげくに、自分が三千万の借金をしょい込む羽目になったことを訥々と五十嵐に語った。 食事を食べ終わった五十嵐は、じっと腕を組み柚子の話を聞いていた。 「………では、昔の知り合いである貴方を助ける為に三千万で貴方を買った……と?」 「いえ、逆です」 「え?」 「証いわく、復讐だそうです」 「………………は?」 五十嵐は今までで一番の素っ頓狂な声を出した。 「ふ……復讐?」 「はい。……証って、今の姿からは想像できないけど、昔は割と泣き虫のいじめられっ子だったんです。私はそういうウジウジしたのが嫌いで、あいつによく喝を入れてたんですが、それが向こうはどうも虐められてたって捉えてるみたいで。……私はそんなつもりなかったんですけど」 「………しかし、復讐とは穏やかではないですね。それに、それと貴方を買うということと、どう繋がるんですか」 混乱も極まれりといった表情で、五十嵐は首を傾げた。 柚子は苦笑を浮かべる。 「一日10万……つまり、10ヶ月で三千万。その間、私に奴隷として証に仕えろと。……一切、口答えはするな、と。……恥ずかしい話ですけど、条件の良さに目が眩んで、私はそれを承諾したんです」 「…………………」 五十嵐は絶句して、ただただ目を丸くしていた。 しかしようやく理解できたというように、ふーっと大きく息をついた。 「なるほど。それであの裸エプロンという訳なんですね」 「……………はい」 柚子は立ち上がり、食器を片付け始めた。 「ずいぶんと憎まれたものです。正直、あと10ヶ月もこんなことに耐えられるのか、自信がありません」 少し自嘲気味に笑ってから台所へと戻っていく柚子を、五十嵐は黙って見つめていた。  
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