16人が本棚に入れています
本棚に追加
「勝手に寝てろ…オレに構うな」
あの後、やっとフォーネストさんに追いついた私は、この教会に一部屋しかない客室にフォーネストさんと一緒にいました。
フォーネストさんは、部屋に着くとすぐに窓際のベッドに寝転がり、私に背を向けて先ほどの言葉を送ってきました。
…勝手にと、申されても。
男性と深夜の部屋に二人きりなんて始めてのことです。そんな状況で、落ち着けるはずも無く、私は、フォーネストさんの眠る隣のベッドに腰を下ろしたまま石のように動けなくなっておりました。
そっと、フォーネストさんに気づかれないように息を吐きました。
それから、月明かりが差し込んでくる窓へと目を向けます。
真っ白い月。私がずっと見ていた月と変わりません…異世界へ来ているなんて思えないくらいです。
目頭が熱くなって、涙が溢れそうになった時、目の前のベッドが軋みました。
その音に体がびくっと震えました。
窓からフォーネストさんの寝ているベッドへと視線を移すと、私を見上げてくるサファイアの瞳と重なりました。
とくん、とその視線を受けて心臓が跳ねました。
え…今のは、なに?
不快ではない、けれど、少し切なくなる鼓動に、私は、胸を押さえました。
「何もしない」
まっすぐ向けられた視線と言葉に、私は、最初何を言われているのか分からず、返事をすることも忘れ、じっと彼の目を見つめておりました。
その私に、彼は再び気だるげに唇を動かしました。
「生きてる女には興味が無い。安心しろ」
「あ、はい…」
思わず、頷いてそれから、やっと言葉の意味を理解すると同時に、頬が真っ赤に染まります。
羞恥でさっきまで以上に、この部屋にいることが窮屈に感じました。
「…さっきから、落ち着きの無いやつだな」
「す、すみません」
「はあ、だから生きてる女は面倒で嫌いだ」
呆れたような言葉と同時に、信じられない言葉が彼の唇から紡がれたような気がします。
最初のコメントを投稿しよう!