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「あの野郎騙しやがったな! 生きていりゃあ。そら、傷一つねえだろうさ」
「…え?」
眉間にいっぱい皺を寄せて、目の前の綺麗な瞳は遠ざかりました。
私は、その顔を追うように横たわっていた体を起こして、改めて辺りを見回しました。
最初に目に留まったのは、天窓と壁に納められたステンドグラスとその前にある祭壇でした。
祭壇の両端には、燭架が一台ずつ置かれております。その両方とも蝋燭には火がともされており、室内をほんのりと照らしております。
ステンドクラスは、外から差し込んでくる月の明かりで幻想的な輝きを放っています。
その幻想的な世界に溶け込み、一際艶然とした姿でワイングラスを傾ける人がいました。
先ほど私の顔を覗き込んでいた人です。
サファイアの瞳を持った人は男性でした。
均整のとれたすらりと細長い姿態と、淡く輝くペールブロンドの腰まで伸びた髪。毛先に近づくにつれ、ふわりとウェーブがかかっています。
彼の唇がワイングラスから離れると、その唇は濡れて光り、艶麗な雰囲気を助長しているように見えました。
そのような姿を見て、自然と胸が高鳴り、頬に熱が集まるのは仕方の無いことだと思います。
言葉をかけるのも忘れて、しばらく彼を見つめておりますと、すっとその彼から視線を送られてきました。
私は、黙って彼を見ていたことを知られることが恥ずかしくなり、慌てて彼に向かって声をかけました。
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