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「きょう…かい?」
そして、白い花と私を納めた黒い箱。
「ひ…棺…なの?」
なぜ?
どうして?
私が、棺の中にいるの?
不安と、恐怖と、混乱で頭がどうにかなってしまいそう!
「おや、本当ですねぇ、生き返ってしまわれたようだ」
扉が開け放たれた音と同時に、間延びした声が聞こえました。
その声にハッとして顔を上げると、そこには真っ黒い服を纏い銀縁の眼鏡を掛け口元に笑みを浮かべた男性が立っておりました。
その後ろから、扉を閉めてそのまま閉めた扉に寄りかかる先ほどのサファイアの瞳を持った男性の姿がありました。
私は、彼とこちらに歩いてくる黒装束の男性を交互に見て、それから、近づいてくる男性へ声をかけました。
「神父…様、ですか?」
「サイードと申します。神父…とは、貴女がいた世界の神に仕える人でしたね?」
「はい…そうです。あの、私の世界とはどういうことでしょうか?」
私の問いに、目の前の男性はさらに笑みを深くして首を横に傾げた。
「私の役職は、貴女が言った神父と同様ですが、この世界では呼び方が異なります。また、役職名で個人を指して呼ぶ習慣もありません。私のことはサイードと呼んでくださいね」
「は、はい、分かりました。サイードさん」
サイードさんのお言葉に、思わず頷いてから、貰いたかった回答を頂いていないことに気がつき、再び問いかけようとしたら、そっと顔の前に手を翳されました。
「え? あ、あのっ」
「今日はもう遅いので、貴女が聞きたいことは翌日に全て答えさせていただきます。貴女も突然のことで、色々と混乱もしているでしょう。一晩置いてからの方が、きっと、混乱も少なくお話できると思いますから…ね」
子供に諭し聞かせる様に、最後の一言だけ区切って言ったサイードさんに、私は、また素直に頷いてしまいました。そんな私を見てサイードさんは、翳していた手を私の頭の上に移して優しく撫でてきました。
「いい子ですね…では、フォーネスト皇子。後はよろしくお願いします」
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