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「え…あの」
「そんなに広い場所ではありませんが、早く追いかけないと見失いますよ?」
苦笑交じりに私を抱き上げて棺から出してくれたサイードさんは、そう言葉を続けて扉を開いて廊下へ連れてってくれました。
廊下は真っ暗で、先が見えません。
その中で、うっすらと見えるペールブロンドの髪。
その髪の毛はユラユラと蝋燭の火のように揺らぎながらどんどんと遠くへ行ってしまいます。
こんな暗い場所を一人で歩くなんて嫌です。
私は、慌ててフォーネストさんの後姿を追いかけようと足を踏み出して、それから振り返りました。
「どうしました?」
振り返った私に、サイードさんは首を傾げてきました。
その彼に、私は、一度頭を下げてから一言おやすみなさいと告げ、返答を待たずに走り出しました。
ああ、もうあんなに遠くにいらっしゃいます。
「…はい、おやすみなさい…よい、夢を」
背後から、サイードさんの声が聞こえました。けれど、振り返って応じることはせず、私は、必死でフォーネストさんを追いかけました。
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