奏でる前の4小節

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汗、涙、鼻水。どれがどれで何処から出てきたのか判らなくなっていた。 僕は辺りを見渡す。他の奴等もきっと同じで、無我夢中になって本当に楽しんでいる。 『終わりは始まり』と誰かが言った。 本当の意味とは少し違うかも知れないけど、考えてみるとあの時、僕はこの景色を想像していたんだ。 そして、今。 吹き出る汗でぐちゃぐちゃになりながら── 彼女に出逢った日のことを思い出しているんだ。 曲が終わり、また始まる。 いつだって"終わり"は"始まり"を告げるのだ。 次でラスト・ナンバー。ドラムのスティックが始まりの4小節を刻み始めた──。
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