落合橋から大仏ダイブ

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   入道雲の階段は幾重にも連なりて、ついにその頂は天へと達した。まもなく天国の門がゴロゴロと開かれ、誰かの魂が召されるであろう。  ────なーんてな。俺って意外と詩人じゃね?  今日は1学期最後の日曜日。期末テスト終わったし、何とか“赤紙”からも逃げ切れたっぽいし。あと数日の辛抱で夏休みだと思えば思うほど、浮かれ気分も上昇していく。  はっきり言って今、俺の頭は相当おかしくなってるに違いない。  そうでなければ冒頭のクサいフレーズなんか思い浮かばないだろうし、そもそも滅多に口を利かない仲の親父と出かけたりなんかしなかった筈だ。 「なーにが『ここらは父さんの庭みたいなもんだ!』だよ。家でて1時間足らずで迷子じゃねーか」  現在地は周囲360度に山が迫る、狭い盆地の田舎道。ドライブがてら山奥のキャンプ場を下見、それから2つのダムを通って、最後に昼メシを食って帰る予定だと話していた親父は──今、第1村人に「キャンプ場はどこですか?」とインタビューしている。  このご時世にカーナビをつけてないのもどうかと思うが、もっと信じられないのはケータイに“圏外”の文字が出てることだった。  
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