幽霊屋敷

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私、穂積千景(ほずみちかげ)は今日新しい家に引っ越した。家は働いている喫茶店の隣町の音州益(インスマス)にあり海に囲まれた町だ、家は大きく、山側に建っていてどちらかというと別荘に近いと思われる。何でもその家は周辺から幽霊屋敷と呼ばれ、不動産屋からもいわく付きの物件と言われていて、二階の開かずの間から足音がすると言われ紹介された。元々そういう話は嫌いじゃないし幽霊だって存在するだろうと思っているので私は気にもとめなかった。ただ、その物件が良質で安いから決めたっていうのもあるけど一番興味を持ったのはこの家の以前の入居者の女性研究家の詳細だった。彼女が行方不明になって以来誰も入居者がいなかったので研究資材、レポートなども残っているのではないかという好奇心があったからだ。 「…意外と山が近いわ…熊とかでないよね?」 私は車に乗って新居に向かっていた。荷物は既に新居に届いているはず、急いで車を走らせると前方に大きな家が見えてきた、二階建てで洋館のような造りの家…あれが私の新居だ、家の駐車場に車を停めると、先客がいて、大きめの車で中に沢山の荷物が入っていた。運転席には誰もおらず、玄関前に人影があった、背は私と同じぐらいで、ショートヘアの髪に少々不機嫌そうな顔をしてドアにもたれかかっていた。 「ご苦労さま、尚子。」 「…全く…人の休日にいきなり電話して引っ越しを手伝えって…幼なじみにも少しは気をつかいなさいよ…千景。」 「あら…私は尚子だからお願いしたのよ?愛(めぐみ)に手伝ってなんていえないでしょ?」 「それはそうだけど…だからといっていきなり電話してきて手伝えなんて急すぎるのよ…何日か前に言ってくるなら別だけど…」 「え…?でも近々引っ越しするって話はしたよね?」 「そういう事じゃないの!事前に引っ越し日とか教えなさいって事!直前になって電話されても困るんだから」 「あはは、まあまあこれが終わったら愛を呼んでお酒でも飲みましょう?ご馳走するからさ♪」 「…もう…まあいいけどね…」 「それじゃあドア開けるから待ってて」
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