一章 風の強い日

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少し考えてみたが 『……知らね』 『なっ何~』 『俺は知ってる。S高の岡崎と言えばスノーに並ぶ優勝候補の一人で、T県最強と言われてた奴だ』 光弘が言うと、ヤンは少し嬉しそうな表情で 『オッ お前よく知っとるがな』 光弘は知っていたが、やはり判らなかったので 『へ~そうなの、知らなかったよ。そんな奴がいたなんて』 『やっぱりお前はバカにしとるだか。なんならここで高校時代のインターハイ決勝やってもいいだで』 互いに眼が合う…フッ 『さっきは悪かったな。インターハイ決勝はなしだ、俺はボクシングを辞めたんだ』 そう言い立ち去ろうとした 『待てや、逃げるだか』 『やめとけ岡崎。スノーとヤリあえば二人ともどうなるか判るだろ』 光弘は目線をヤンの赤らんだ右腕に移した 『やってみんと分らんがや』 『もういいだろ。ヨソから来たもの同士、仲良くしようぜ』 パンッ! レースの始まった音が聞こえた スノーはもう遠くにいた 『俺達も行こうぜ』 気に入らなそうな顔をしてヤンも歩き出した
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