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「私は……神なのか?」
答えが帰ってこないと分かっていても、私は空に問いかけてしまう。
「人から見れば、私は神らしい。時間に殺されないし、力も人よりは強い。だが」
私の仕事は有能な死者を導く事だ。つまり、私に会えば自分は優秀だと誇れる。戦士や文官の間では、私に召される事はこの上ない名誉らしい。しかし――
「私に会えば死ぬ、というわけではないのにな……人から見れば仕方ないだろうが」
逆に言えば、それは私に会えば必ず死ぬ。という事の裏返しでもある。
そのせいか、私は昔からいろいろな呼び方をされてきた。前は天使の使いや、戦乙女といった呼び方であった。
同じ使命を持つ仲間達も、その頃はまだ多かった。近頃の、あの呼び方をされるまでは。
「戦乙女と呼ばれていた頃は、まだ幸せだったな」
人の魂のように、通り過ぎてゆく風が身に刺さる。今、草原で生きているのは、私だけだ。
暗闇の中に、ただ一人で佇む私。そんな私を遠目で見た人間は、私をこう呼ぶのだ。
死神と。
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