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今とて例外ではない。私は死を嗅ぎ付けてやってくる死神。私を恨む人間は多くいた。
「死神……私の兄の仇、忘れたわけではないだろうな?」
「やはり現れたか、この死神が」
気がつけば、周りには殺気だった人の気配。家族を私に殺されたと思った、人間達のやり場のない怒り。それが私を取り囲んでいた。
「殺しはしたくないのだが」
腰にある剣に手を伸ばす。ただ死んだ魂に道を与えているだけなのに、なぜこうも恨まれるのか。
「私に選ばれた者は、まだ生きている。天上で、神の為に働いているのだ」
殺気が一層強くなる。どうやら、話すだけ無駄らしい。
一筋の風を巻き起こしつつ、剣を抜き放つ。金の羽が象られた、細い刀身の剣は、月光を浴びてなお光を増す。
人間は20人ほど。しかも、家族を失い、自暴自棄の人間である。憎しみの心が、私にもありありと伝わってくる。
ただ、私は少しだけ望んでしまった。この役割を終わらせたい。いつまでも蔑まれ、死神と後ろ指をさされるのは、辛かったのだ。
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