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屍の中に、私は立ち尽くしていた。先ほどまで私を恨んでいた者達も、今は物言わぬ身となっている。
しかし、私も今血反吐を地面に叩きつけて膝をつく。無傷で切り抜けるには、相手が多すぎた。
火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか。戦乙女とあろう者が鎧は砕け、剣も血糊で輝きが鈍っている。
「ここで、終われるのか……」
青く残忍な空。それを見上げつつ、私はぼやける視界の中、手を伸ばした。
「自分の魂を、天に送る事はできないのか……」
何も起こらない。可笑しくなって、情けなくと、思わず笑い声が漏れ出してしまう。
「今まで他人は救ってきたのに、自分は救えない……滑稽な死神だな」
死体の山の頂きで、死神と揶揄された彼女は笑い声をあげる。それは、静かな救いを求めるように、宙を駆け抜けた。
「今思えば、報われない人生だったな」
振り返ればそう。他人の死を何度も見てきた。死にたくない、まだ生きていたい。
そんな魂の叫びを聞いてきた彼女もまた、静かに微笑むと身を横たえた。
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