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いつもと変わらない天気。
いつもと変わらないフィレンツェの街の雰囲気。
時間が流れていくのが体で感じられるほど、穏やかだった日。
そんな日にはこうやって、カフェのテラス席でエスプレッソコーヒーでも飲みながら空を眺めるのが最高に気持ちいい。取り分け俺みたいなその日暮らしの人間には至高の時間だ。
だがそんな日に限って人の運命とは大きく変わる。
しかもそんな至高の時間に、だ。
今回は俺の番だったらしい。
何でこんな日にそんな大それたことが起こるのだろう。
でも今更言っても仕方がない。
変わったものは仕方ないんだ。
始まりはちょっとした情報通の家族…従兄弟の言葉だった。
「なあおい、最近ギャングの勢力が増してきてるの、知ってるか?」
突拍子もなく聞いてきた従兄弟を俺は少し滑稽だと思った。
いいや知らないね、と軽くあしらったつもりがその従兄弟の提供者魂に火を付けたらしく、口調とテンションが先程より倍加して返ってきた。
「知らないって何さ。近頃の犯罪の増加率見てみなよ、知らないとは言わせないぜ?」
友人は朝刊を俺の前に突き付けて嫌らしい笑みを浮かべてきた。
ここまで来ると手が付けられない。
「…わかった話してみろ」
俺は折れた。
一度こいつがこうなったら全部吐き出すまで止まらないからだ。
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