序章

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人通りのほとんどないゴミ捨て場についた。 台車から資料を下していく。 紙は束になると重く、 時々腰を叩きながら、手を動かす。 彼もそう若くはない。 もうすぐ30歳。 周りは就職し、結婚したり子供もいたりする。 それに比べ、未だ学生の自分。 そこへひらりと胸からなにか落ちた。 それは結婚式の招待状。 29歳は最後の20代のため、周りが結婚していく歳だ。 そのためご祝儀貧乏になる。 彼も例外ではない。 彼は大きく息を吸い、吐いた。 気持を切り換えるときの彼の習慣だ。 そして空を見上げ、小さくつぶやいた。 もう考えないことにしたんだろ。 俺。 しかし、言い終わる前に、空に人影があるのを発見した。 ―…! スローモーションで空から 落ちてくるその人影を見て彼は思った。 ―天使が降ってきた― これが彼と彼女の出会いだ。
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