彼の町

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船に乗って島に付くと いつも小さな台車を押した腰をひどく曲げた小さなおばあちゃんが満面の笑みで手を振って出迎えてくれた 「おばあちゃん!」 お父さんの手を離して駆け付けては纏わり付いて困らせてたっけ そんなあたしを大人達はいつも笑顔で見守っていてくれた 船着き場から徒歩3分位で古い大きな日本家屋に着く ここがおじいちゃん達の家 あたしの大好きな場所 足の悪い彼はいつも2階の窓から手を振ってあたし達を待っていてくれた 「ただいま‼」 そう叫んで、靴も荷物も投げ出す様にして2階に駆け足で上がる 「おじいちゃん!」 そして彼に抱き着く 彼はギュゥって抱きしめて、それからあたしの顔を見て頭を撫でた これがあたし達だけの挨拶 おばあちゃんが1階から 「ご飯ですよ!」 って呼びに来るまで、ずっと二人で話をしてた 学校の事だったり、両親の事だったり もっぱら彼は聞き役だったけれども 毎回似たり寄ったりな拙いあたしの話をそれでも彼は驚いたり、褒めたりしてちゃんと聞いてくれた 「にゃんちゃんはいい子だね」 って目を細めながら
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