但馬

11/17
前へ
/565ページ
次へ
鹿介は、この槍を軽くかわすと相手の足を槍で突き刺した。 悲鳴を上げて踞(うずくま)る足軽は、槍を捨てて両手で足を押さえるが、指の間から血が溢れ出している。 鹿介は、更に仲間を倒され、恐れて棒立ちする足軽の脇腹に素早く槍を突き刺し、瞬く間に二人を討ち取った。 これを見た武田の足軽達は、味方のいる川の方へと逃げ出してゆく。 尼子勢は、俄かに敗走する武田の足軽達を追い立てて河原へ迫った。 最初に川を渡って追撃を始めた足軽達は約40人で、兵数ならば尼子勢と同等である。 ただ、尼子勢は武士のみで構成されているため、槍さばき一つ取っても足軽など相手にならない。 半農半士の足軽と代々武術を御家芸として、伝来の技を磨いてきた専門の戦闘集団とでは、余りにも実力が違い過ぎたのだ。 それでも、集団対集団なら、如何に尼子勢の個々の戦闘能力が高かろうと、数の多い方が有利であるには違いない。 しかし、武田勢は鹿介の策によって寸断され、剰さえ指揮官たる武士と切り離されては勝負にならなかったのである。
/565ページ

最初のコメントを投稿しよう!

354人が本棚に入れています
本棚に追加