【初陣】

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「じじい、あれは『破壊神の力(ゴット・ブレイク)』で間違いないんじゃろ」 「ああ、わしも魔神には会ったことがある。お前さんが見えてもそうなら間違いなかろう」 「しかし、なぜじゃ。あれは魔神しか使えぬ。『神の力』じゃぞ」  全てを破壊する魔力。魔界で最強とされる魔神が持つ力。その魔力で作られた武器に、壊せない物はないと言われている。存在自体が破壊する力を持った神の力。 「魔神にはまだ遠く及ばないとはいえ、破壊神の力を持っているとは末恐ろしいガキじゃ。あの子の教育を間違えば世界を脅かす脅威になるぞ」  だが賢者たちが驚く中、シグ達は巨大な影に覆われる。空は快晴なので、そんなことあるはずがないのに。 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」  その場にいた誰もが声を発することができない。ゼロの力に気を取られ、まったく気付かなかった。空を覆う巨大な影が現れたのを。その影が、太陽を覆うまで。 「フィール、逃げろ!」  フィールは逃げようにも、最強種であるフェイがその場を動けない。 「シャドー!!!!」  そして何もできず周囲に暴風と衝撃が走る。 「さ、サイクロプスじゃと。な、なんで絶対種の巨人がこんなところにおる」 「コアー!!」  離れた所にいる賢者たちが肉眼で見ることができるほどの巨人。賢者たちですら、どこから現れたのかわからないでいる。さらに、サイクロプスが持つ巨大な棍棒を振り下ろした衝撃がやってきた。 「な、何も見えない。みんな無事なのか?」 周囲に立ちこめる土煙り。それはまるで爆発の煙のように周囲へと広がっていく。 「くそ、邪魔だ! 天使達が起こす風(アンジェラス・ウィアル)」  ゼロは立ちあがって周囲の土煙りを風で吹き飛ばす。そして晴れた景色に、倒れこむコウヤが写る。 「コウヤ! 大丈夫か」 「うるせー、よ。肉体強化してたんだ。ある程度の攻撃には耐えきれる」  だが、衝撃でこの威力。一つ目の巨人が振り下ろす棍棒を直接受けたら生きては居られないだろう。 「やべ…目が合っちゃった」  土煙りが晴れたことにより、サイクロプスは獲物の姿をとらえる。
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