【初陣】

6/9
前へ
/69ページ
次へ
「逃げるぞコウヤ!」 「待て! あそこにコアが!」  少し離れた所で、うずくまっているコアの姿がある。でも、ゼロやコウヤのように肉体強化などをしていなかったので、傷だらけのようだ。 「くそ、『破壊神の槍(ゴット・ブレイス)』」  ゼロの槍は腕に直撃するも、サイクロプスの固い皮膚で致命的なダメージにはならない。 「ダメだ、早く逃げるぞ!」 「待ってろよ、コア!」  だが二人がコアの前に着くより、サイクロプスが棍棒を振り下ろす方が早いのは分ってる。すると、周囲に横たわっていた鎧が動き出し、二人を抱えてその場を離れようとした。 「こら、放せ! シグ、てめー仲間を見捨てんのか!」 「動くなコウヤ、こいつら破壊神の力でぶっ壊してやる」 「いいから…逃げてーな」  だが、離れていくコアの声が聞こえる。 「仲間を助けようとして自分が死んだら、意味ないで」 「ふざけるなよ。だからって逃げられる訳ないだろ」  だが無情にも、サイクロプスの棍棒はコアへと振り下ろされる。 「コアー!!」  そして、訪れる衝撃から鎧は二人を守る。衝撃に飛ばされながらも、二人を離さず遠くへ遠くへ向かう。 「まったく、余計な手間掛けさせやがって」 「…誰なん?」  土煙りでよく見えないが、コアは自分の前に誰かが立っているのを感じる。 「助けられる力もないのに誰かを助けようなんて、甘いんだよ」  よく見ればコアの周囲には結界が張られており、どうやらそれで衝撃からは守られたようだ。 「大丈夫か? 本当は光魔法で治してやりたいんだが、この体じゃ光魔法は使えないんでね」  風が吹き、土煙りが晴れる。 「そこでじっとしてろ。一人守るくらいならわけない」  そして目の前に広がる光景にコアは言葉を失う。なぜなら漆黒の鎧を纏った誰かが、サイクロプスの棍棒を片手で受け止めて立っていたのだ。 「まったく、殴るしか脳のない奴が好き勝手暴れてくれたな」  漆黒の鎧は顔も覆っているので、誰だかわからないが、纏っている魔力は黒い。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加