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「逃げるぞコウヤ!」
「待て! あそこにコアが!」
少し離れた所で、うずくまっているコアの姿がある。でも、ゼロやコウヤのように肉体強化などをしていなかったので、傷だらけのようだ。
「くそ、『破壊神の槍(ゴット・ブレイス)』」
ゼロの槍は腕に直撃するも、サイクロプスの固い皮膚で致命的なダメージにはならない。
「ダメだ、早く逃げるぞ!」
「待ってろよ、コア!」
だが二人がコアの前に着くより、サイクロプスが棍棒を振り下ろす方が早いのは分ってる。すると、周囲に横たわっていた鎧が動き出し、二人を抱えてその場を離れようとした。
「こら、放せ! シグ、てめー仲間を見捨てんのか!」
「動くなコウヤ、こいつら破壊神の力でぶっ壊してやる」
「いいから…逃げてーな」
だが、離れていくコアの声が聞こえる。
「仲間を助けようとして自分が死んだら、意味ないで」
「ふざけるなよ。だからって逃げられる訳ないだろ」
だが無情にも、サイクロプスの棍棒はコアへと振り下ろされる。
「コアー!!」
そして、訪れる衝撃から鎧は二人を守る。衝撃に飛ばされながらも、二人を離さず遠くへ遠くへ向かう。
「まったく、余計な手間掛けさせやがって」
「…誰なん?」
土煙りでよく見えないが、コアは自分の前に誰かが立っているのを感じる。
「助けられる力もないのに誰かを助けようなんて、甘いんだよ」
よく見ればコアの周囲には結界が張られており、どうやらそれで衝撃からは守られたようだ。
「大丈夫か? 本当は光魔法で治してやりたいんだが、この体じゃ光魔法は使えないんでね」
風が吹き、土煙りが晴れる。
「そこでじっとしてろ。一人守るくらいならわけない」
そして目の前に広がる光景にコアは言葉を失う。なぜなら漆黒の鎧を纏った誰かが、サイクロプスの棍棒を片手で受け止めて立っていたのだ。
「まったく、殴るしか脳のない奴が好き勝手暴れてくれたな」
漆黒の鎧は顔も覆っているので、誰だかわからないが、纏っている魔力は黒い。
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