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少し前、食堂を出たシグはある所へ向かう。その後ろを他の弟子たちが追った。
「ふう、言っとくけどたいした物はないぞ」
そしてシグが入った部屋。そこにはとても広く、本棚や紙の束がつまれた机などでごった返していた。
「…ここは?」
「オレの研究室。まあ簡単に言えば与えられたオレの部屋だ。一応ここにあるのは全部オレの物だしな」
「すごい。マスターでも持ってないような本がたくさんあるえ」
「研究か、弟子なのに何を調べるんだ」
「いろいろだ。まあオレはアルエが手を出してないような分野も研究してるからな」
他の弟子は学生だったり賢者の手伝いしかしていないので、自分の研究をしていることをすごいと思う。
「…人体構造、錬金術。手を出しすぎじゃない?」
「人体構造はアルエと共同だ。人に近い魔動人形。それがアルエの研究だしな。他にもあるが、錬金術は金属を土台(べーす)にした魔器の開発なんかでやってる」
「ずいぶん努力してるんだな」
ここにやっと口を開いたゼロ。だが、二人の間には冷たい空気が流れる。
「お前みたいに破壊神の力を持ってる訳じゃないからな。強くなるためには何でもするさ」
「おいこの研究書、師匠のと少し違うぞ」
「あんまり見るな。それに、それはアルエが出したものだ。紅の賢者はアルエが自分の分野も研究してんのが気に食わないみたいだがな」
やれやれといった感じで頭をかいていると、カートにティーポットを乗せてキサが入ってきた。
「こちらにいらしたんですね。お茶をお持ちしました」
「監視か?」
「いえ、あちらのお話はお聞きしないほうがいいかと思いまして」
「だろうな。結界まで張って、オレに見えないようにしてる。…まあ、だいたい何を話してるか想像はつくがな」
キサは一人一人に温かいお茶を渡す。すると、コアがシグの前へやってくる。
「あの…今日は助け―」
「何も言うな」
だが、少し冷たい感じでコアの言葉を遮る。
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