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「貴様、コアはずっとお前にお礼が言いたいって思ってたんだぞ」
「言われる筋合いがないんだよ。…悪いのはオレなんだから」
「どういう意味だ。場合によっちゃただじゃおかないぞ」
和みつつあった空気が再び冷え、キサは居てはまずいかと入口へ向かう。
「いいよキサ、居てくれ。…あのサイクロプスは、おそらくオレとフィールを抹殺すために王家か誰かが仕組んだものだ」
「どういう意味だよ! なんで貴様とフィールが?」
フィールの名を聞いてコウヤより先にゼロが反応するが、シグはそれを無視しする。
「今の王家にとってオレ達は邪魔な存在なんだ。…さすがに絶対種が出てくるのは予想外だったがな」
「それで、なんでお前のせいなんだ?」
責められると思っていたのか、意外そうな表情を浮かべた。
「オレとフィールが居たからお前ら危ない目にあったんだぞ。…今日は運が良かっただけで下手をすればこの子は死んでいたんだ」
「別にお前が何かした訳じゃないんだろ。…俺の師匠も王家の人だ。その程度じゃ驚かねえよ」
「お前らだって下手すりゃ死んでたんだ。なんでそんな平然な顔してられんだ?」
だがコウヤだけでなくコアも、正確にはゼロ以外は驚いている様子はない。
「命狙われたことがあんのが自分だけだと思ってんのか? 悪いが俺もコアも学校に通ってる訳じゃねえ。何かあれば自分の命は自分で守ってんだよ」
学校の敷地内はあらゆる結界で守られており、学校に通っている者は命の危機に直面することはほとんどないのだ。
「さすがに絶対種に襲われたのは初めてだし、そこまでしてお前らを消そうとしてるのには驚いたが…お前も被害者だろ」
「あの…だから、言わせて。今日は助けてくれてありがとう」
いつ以来だろうか。下手をすれば、今まで親しくない者からお礼を言われたのは初めてのことかもしれない。それほど、シグは感謝されたことがないのだ。
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