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「なんて言っていいかわからないけど…やっぱりオレは、お礼を言われる資格はないよ。あのとき君とフィールが空にいたけど、オレはシャドーにフィールを守らせたんだから」
「でも、うちのことも守ってくれた」
「それでも、君は大怪我をしたんだ。たまたま助かっただけで、死んでいてもおかしくなかった。でも、オレはフィールの安全を優先したんだ」
「優しいんだね。…でもね、あなたが助けてくれなかったらうちは間違いなくしんでいたえ」
「俺たちだって死んでた。あの時はとても冷静な判断ができる精神状態じゃなかったしな」
まだ会って二日しか経っておらず、お互いを全く知らない。そんな人に『優しい』と言われた。
「オレのどこが優しいんだよ。オレは見捨てたんだ。たまたま助かったから助けただけで、オレは…」
「あなたは優しいよ。だって、うちのことでそんなに苦しんでくれてるじゃない。どうでもいいなら、そんなに苦しそうな顔しないでしょ」
罪悪感は優しさなのだろうか。良心と呼べるのだろうか。
「助けてくれて本当にありがとう。だから、もう気にしないで。みんな、無事だったんだから」
シグは器用じゃない。だからそう簡単には割り切れないが、向けられる笑顔は全てを包み込む空のように広く感じた。
「もういいか? なんでフィールが狙われてんのか理由を話せよ」
だが、その後ろからは突き刺さるような冷たい視線を向けられる。
「邪魔だからさ。ただそれだけだ」
「答えになってねんだよ。いったいどいつがどんな理由で狙ってんのか詳しく話せよ」
「話しても無駄だよ。フィールを守れない今のお前にはな」
「んだと、やるのか」
「止めろよ、ゼロ」
だがコウヤの制止を聞かず、ゼロは魔力を纏う。
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