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「ただ、できるだけもうオレには関わるな。今日みたいな仕事の依頼は全部オレが一人で受ける」
「…シグ」
「厄介事は全部オレが背負う。そのために身に付けた力だしな」
「ふざけるなよ。貴様何様のつもりだ」
「ククク、自分一人の命も守れない奴が笑わせるなよゼロ。いくら攻撃がオレより上でも、生き残れなきゃ意味がないんだよ。死んだら、人生それで終わりなんだから」
シグは攻撃力でなく防御に特化した力を身につけたのは、何があっても生き残るという強い意志があるからだ。だから鎧はその意思を体現したものなのかもしれない。
「ん、結界が解けたか。…戻るぞ」
「お前、さっきからなんで分るんだ? 俺には何も感じないぞ」
「そうだな、とりあえず“見える”とだけ言っておくよ」
シグの右目はこの世の全てを見通すと言われている『万里の魔眼』になっており、壁を透かしてアルエたちのいる食堂の方が見えるのだ。もっとも魔力で眼の色を変えて分からないようにしているので、アルエとキサ以外は誰も魔眼だとは知らない。
「おい、俺はまだ話が終わってないぞ」
「しつこいな。…今のお前じゃオレには勝てないよ。鎧が破られたって、オレにはお前を確実に仕留められる力があるんだからな」
そのときシグが向ける左目が見たこともない眼に変わっていた。本当にまだ力を隠しているのだろう。
「…行こう」
「お、おいフィール、まだ話は―」
だが終わりそうにないと判断したのか、フィールはゼロの手を引っ張って部屋を出ていく。
(ふ、手をつなぐくらい仲良くなったのか)
「俺達も行くか。お前のことに関してはまた後日聞くことにするよ。…たぶんこれからも長い付き合いになるだろうしな」
「うちも、もっと強くなるえ。だから、そんときは頼ってな」
そして他の二人も後を追うように行ってしまう。
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