【初陣】

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 パルス国跡地の近く。そこに張られた陣に八王と四賢者、つまりこの世界の最高権力が集まっている。そして、少し離れた場所にたつ五人の若人。一人は竜(ドラゴン)に乗った少女で、無表情で後方に居る少年を見る。その隣には白いマントを纏った少年がいて、身の丈ほどある杖を携え。その少し前に黒いローブを纏い、赤紙を束ねた少年が体を慣らしている。その横で蒼いローブを着た少女が嫌そうに眼鏡を直し、分厚い魔道書を抱えていた。そして一番後ろに控えるのは黒いマントとローブを纏い、竜に乗る少女から視線を逸らす少年。 「お出ましだな。お前ら、足引っ張るなよ」 「相変わらずやねコウちゃん。なら一人で片付けてよ」 「誰に向かって言ってんだコウヤ。お前こそ俺の足引っ張るなよ」 「…シグ?」 「…………」  跡地から武装した魔動人形が集まり、迫ってくる。そんな状況でも恐れる様子はない。 「お前ら全員、邪魔だ!」  マントから手を出したシグの両手、その指の全てに指輪がはめられている。 「幾重魔法(デュアルマジック)…風刃爪牙(エアルド・ファングロー)」  放たれた十の風刃は折り重なって、迫りくる魔動人形を切り刻む。 「あの野郎。いつか殺す」 「コウちゃん、前見てないと危ないえ」  シグの前の敵はバラバラに吹き飛んだが、風刃が当たらなかった人形は目の前まで迫る。何とかシグの刃をかわした他の弟子も魔力を纏う。 「紅、それは肉体を示す色。肉弾戦で俺に勝てると思うなよ!」  ローブ越しでもわかるほどコウヤの筋肉が隆起し、人形へと襲いかかる。 「神激の雷槌(ゴルリド・ボルハント)、固定(セット)、吸収装備(ドレイン・ウェア)…吸収装備…神激の雷槌の鎧(ゴルリド・ボルハント・アーマー)。俺だって負けないよ」  そして吸収装備を纏ったゼロとコウヤが前方の人形を蹴散らす。その間に二人の少女は空を舞う。
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