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「これは『ドリリン』といって、薬指にはめて願いをいうと、その願いが叶うというものだ」
この老人は、詐欺にでもあったのだろうか?それともこの老人が詐欺師なのだろうか?
「まあよい、助けてくれた礼にこれをやろう」
老人は銀色の『ドリリン』と呼ばれた指輪を四つ、貴明に渡した。
「よいか、薬指にはめて願いをいうのじゃぞ」
老人はそれだけ言って、去っていった。
「こんなん高校に持っていったら規則違反じゃないか」
少しずれた考えかたをする。
「ホントに願い、叶うのかな」
貴明は一つのドリリンを薬指にはめ、歩き出した。
「もし願いが叶うなら――」
大通りを越え、角を曲がる。
「キャ!」
角から走ってきた美少女と衝突した。
(こ、これは運命か)
それは可憐だった。やはり大通りの騒ぎが気になり、戻ってきたのだ。
「す、すいません」
彼女は貴明が来たほうに走ろうとした。
「あの」
貴明は勇気を出し、彼女に告白することを決めた。まだ名前は知らない。
「はい?」
「俺、君になりたい」
言ったあとに、しまったと思った。なりたいじゃない。欲しいんだ。
「は?」
彼女は変な顔をしたが、その瞬間――願いを叶える指輪『ドリリン』が二人を光で包んだ。
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