玉李春

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玉李春

場所は変わって、玉李家。 玉李春はニヤリと不敵に笑うと傍らにいる庸元に尋ねた。 「この私が殺されると思うか?」 「いいえ」 普段は無口な庸元が即答した。 そんな事は有り得ないと庸元は知っているのだ。旦那様は気狂いだと。 玉李家は狂っている。 でなければ、廓から水あげした者を第6夫人などに迎えはしないだろう。 彼は玉李家に仕えるようになり、気付いた事が有る。 温厚で争い事が苦手な気弱な大奥様は何を言う事もなかったが、 他の奥方達は旦那様の寵愛を得ようと日々喧騒が耐えなかった。   それが、ある日──。 旦那様の煩い娘にはお仕置きが必要だね。 そう言った次の日から、一人の奥方の姿を一度も見かける事がなくなった。 その奥方と言い争っていたもう一人の奥方は裸のまま枯れ木の上で絶命していた。 その奥方の足はなくなり、辺りには奥方の足だったらしき骨が転がっていた。 恐らく野犬に食われたのだろう。   その次の奥方達も……。   5人いた筈の奥方は正妻で有る大奥様だけを残し、いなくなくなってしまっていた。 そんな玉李家に嫁いで来る者などはいない。 其処で、旦那様は一計を立てた。 嫁いで来る家が無ければ、廓から探せばいい。 玉李の家の名が有れば、水あげ話しに飛び付いて来るだろう。 そんな理由で廓からの水あげ、第6夫人の座の噂話が流れたのだった。
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