第1章 星の王子様

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「新入生の皆さん」  体育館のステージに立つ生徒会長さんが、わたし達に呼び掛ける。 「高校ご入学おめでとうございます」  その挨拶で、新入生歓迎会が始まった。  そういえば先週も、同じこの場所で同じような台詞を聞いたな、なんて思い出す。  あの時は入学式で、話していたのは校長先生だった。  真新しい制服に身を包んだわたし達は、緊張した面持ちで椅子に座り、静かに話を聞いていた。  あれから1週間の後、同じように集められた新1年生は、先週よりもずっと寛いだ顔をして、思い思いに列を崩して座り込んでいる。一体どれくらいが真面目に生徒会長さんの話を聞いているのやら。  そんなことを考えていたら、目の前にあった栗色の頭が振り返った。  クラスメイトの茉莉花ちゃんだ。  内緒話をするように口許に手を添えるので、少し顔を寄せると、甘い香水が微かに香る。 「ひなちゃん。会長、ちょっとカッコ良くない?」  茉莉花ちゃんは楽しそうにそう囁いた。 「そ、そう、かな?」  そんなとこまで見てなかったよ……眼鏡だなあとは思ったけど。  生徒会長さんの顔を改めてよく見ようと首を伸ばしかけると、後ろから声がした。 「茉莉花はまた、そんなことばっかり言って。ひなたちゃん、相手にしなくていいからね」  振り向くと、同じくクラスメイトの友希ちゃんが、呆れたような目で茉莉花ちゃんを見ている。 「友希、冷たぁい。いいじゃん、イケメンであるに越したことないんだから」  茉莉花ちゃんが口を尖らせて見せる。  それを見て、わたしは小さく笑った。
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