第1章 星の王子様

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 部活紹介の1番手は野球部らしく、ユニホーム姿の男子生徒がぞろぞろと現れた。  キャプテンらしき人がマイクを取り、活動内容を話し始めるのをぼんやりと眺めながら、先程投げ掛けられた質問を思い返す。  『星が好きなの?』  好きか嫌いかどちらかと訊かれるなら、勿論好きだと答えるだろう。  でも、そもそも星が嫌いなんて人、滅多にいないんじゃないだろうか?  天文についての知識がある訳でもないし、天体観測に熱中したこともない。なのに、星が好きだと胸を張るのは、ちょっと烏滸がましく思えて気が引けた。  ……でも。  それでもやっぱり、わたしは星が好きなんだと思う。  積極的に関わることはなかったけれど、授業であったり、テレビのニュースであったり、帰りが遅くなってふと見上げた夜空だったり――何気ない日常の中でも星に触れる機会は訪れる。  そんな時には決まって、心の片隅が切なく疼いた。  それは、美しいものへの感傷なのか、遥かなるものへの憧憬なのか、それとも、もっと違う何かなのか……。  答えはわからないまま、時折胸の奥を静かに焦がす感情に、ほんの少し戸惑っていた。  天文部に入って、きちんと星と向き合ってみたら、何かが変わるだろうか?
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