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「どうぞー」
その声の後、鉄扉が開くと、事務所に若い二十歳前後の女性が入ってきた。
「ようこそドリームキャチョブッ!」
お菓子のゴミ等で埋め尽くされた事務机の前、そこにカップ麺(きつねうどん)を頬張ったまま夢彦がいた。頬張ったまま話すので、当然口から麺の破片が飛び散る。
「もうぞ、おふわりふばばい(どうぞ、お座り下さいの意)」との咀嚼しながらの夢彦の言葉に促され、女性は一礼し、割り箸で指された赤茶のソファーに腰を下ろした。
カップ麺を携えて女性の正面に席を移した夢彦は、レンゲ片手に依頼を訊ね、女性は、
「え、話していいんですか?」
少し戸惑い気味に聞き、「うん、話して話して」と言わんばかりに夢彦が首を縦に振る。声を出さないのは出せないからで、口の中の麺を依頼人の顔にぶちまけない為だ。女性はまず名前、檜山雪(ひやまゆき)を名乗り、
「…………」
よほど言いにくい依頼なのか、夢彦から目線を反らし言いよどんだ。
「えと…、依頼というのは……その……」
「?」
彼女が口ごもるので、夢彦は首を傾げた。
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