68人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
『まっくら』だった。
ボクの目はどんなに暗闇でも良く見えるけど、なぜだかいつも目を覚ましたら真っ暗闇なんだ。
何にも見えなくて、怖くなって辺りを見回すと、ボクの体も真っ暗で、ボクがどこにいるのかわからなくて、何だかこのまま溶けてなくなりそうだった。
だからいつもボクはもう一度目を閉じて、手で顔を撫でたり、手を舐めたりするんだ。
ボクはボクをちゃんと感じられるから、ボクはここにいるからって。きっと溶けたりしないって……
少し落ち着いてから目を開けると、ああ、お月様が隠れてる。風も湿ってて鼻がムズムズする。雨が降るんだな。どこか、しのげる場所を探さないと……
ボクみたいに小さいのが濡れると、それこそ溶けてなくなっちゃうだろうからね。
ボクはちょっと足早に、だけど慎重に歩き出した。
どれくらい歩いたのか、中々良い場所が見つからない。大抵、ボクより大きな猫がいたり、沢山集まってたりでおもしろくない。
だらんと下がったしっぽを引きずりながら歩く。
しまった!!
不意にボクは気付く。
慎重にと歩いていたのに、ボクは“テリトリー”から出てしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!