くろ

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『まっくら』だった。 ボクの目はどんなに暗闇でも良く見えるけど、なぜだかいつも目を覚ましたら真っ暗闇なんだ。 何にも見えなくて、怖くなって辺りを見回すと、ボクの体も真っ暗で、ボクがどこにいるのかわからなくて、何だかこのまま溶けてなくなりそうだった。 だからいつもボクはもう一度目を閉じて、手で顔を撫でたり、手を舐めたりするんだ。 ボクはボクをちゃんと感じられるから、ボクはここにいるからって。きっと溶けたりしないって…… 少し落ち着いてから目を開けると、ああ、お月様が隠れてる。風も湿ってて鼻がムズムズする。雨が降るんだな。どこか、しのげる場所を探さないと…… ボクみたいに小さいのが濡れると、それこそ溶けてなくなっちゃうだろうからね。 ボクはちょっと足早に、だけど慎重に歩き出した。 どれくらい歩いたのか、中々良い場所が見つからない。大抵、ボクより大きな猫がいたり、沢山集まってたりでおもしろくない。 だらんと下がったしっぽを引きずりながら歩く。 しまった!! 不意にボクは気付く。 慎重にと歩いていたのに、ボクは“テリトリー”から出てしまっていた。
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