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「一号車、全員搭乗!」
《二号車、同じく!》
中倉が席につくと、運転席と無線からほぼ同時に(正確さを追求するなら運転席からやや早めに)報告がくる。
「よし、突貫!」
「《了解!》」
ディーゼルエンジンが低く唸り、直後に加速。僅かに座席に体が押し付けられるのを感じつつ、小銃の柄を握りしめて前方を見据える。
《敵軍、応射開始!》
川をわたるバシャバシャという音が止むや否や、先行していた二号車から切迫した様子の報告が飛び込んできた。
《九時方向、十一時方向、ならびに三時方向です!》
その報告を裏付ける形で、間もなく中倉が乗る一号車の装甲でも鉛玉が弾ける。
「こちらも応戦しますか?」
「いや、要らん」
隊員の一人が血気にはやってMINIMIの引き金に指をかけるのを手で制しながら、通信機を手に取る中倉。
「十式一号車から三号車、敵の応戦部隊を処理しろ」
《了解》
途端、重低音がいくつか響き、悪路を走るときのものとは異質な振動が感じられた。
《敵反撃部隊、壊滅を確認。後続部隊も戦意喪失の上退却開始》
「わかった」
無線からの報告に小さくうなずくと、通信機の接続先を二号車に変える。
「このまま全速前進!一気に目標地点までいくぞ!」
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