信濃侵略

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遥か左方で発生した爆発がMLRSによるものだと中倉は知っていたが、今の彼にそれを気にする暇はなかった。 「よし、総員降車!」 あるのはただ、自分に課せられた役目を果たさんとする使命感。 「周囲の警戒急げ!機銃射手は10時方向と2時方向をそれぞれカバー!迫撃砲は出す必要はない!各員小銃のみだ!」 周りを雑木林に囲まれた小高い丘。遠方では連続的銃声と爆発音が相変わらず響いていた。その合間にあがるいくつもの断末魔から判断するに、戦闘と呼ぶも烏滸がましいワンサイドゲームのようだが。 「こちら中倉!地点◯一に到達!戦闘準備完了!」 二十人全員が戦闘態勢を整えたのを確認し、中倉が胸の小型無線機に向かって叫ぶ。 《こちら本営了解した。作戦発動まで待機》 「了解。各員、現状維持せよ」 通信を終えた中倉が周囲に声をかけ、自らも89式小銃を構える。 遠くでは相変わらず爆発音がひびいていたが、中倉たちの周りには不気味な静けさが降りている。奇妙な緊張感の中、咳さえ誰も漏らさない。 「それにしてもイヤな地形だな」 緊張を緩和したかったのだろう、若い士官が誰にともなく呟く。 「いかにも伏兵ありますって感じでさ」 銃声。そして、喚声。
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