信濃侵略

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中倉がそう叫ぶと同時に、頬を掠める弾丸。 「敵部隊、前進開始!」 悲鳴に近い隊員の叫び。交錯する両軍の銃声がますます激しさを増してゆく。         て 「ちっ!迫撃砲、射ーーー!」 間髪入れずに右手を振る。銃声とは異質の轟音と共に最前列の鎧武者の姿が消し飛んだ。 一瞬足を止めた敵に向けて5.56ミリ機銃が牙を剥き、弾丸の雨が薙ぎ倒す。 浮き足だった所へ再び砲弾が炸裂。さらに二十丁の89式が火を吹き、一気に押し戻す。 「このまま耐えろ!現状維持!」 「隊長、隊長!」 部下たちを督戦する中倉の迷彩服の袖を引くのは先ほどの通信兵。持っている無線の塗装は掠めた弾丸のせいで大分剥げてはいたが、内部には大した損傷がないらしい。 「前進命令です!」 「ふざけろ!」 思わず叫ぶ。装甲車の加護があるとはいえ数千の敵に突入せよという命令なのだから、中倉でなくとも叫ぶはずだ。 「この状況ちゃんと伝えたか!?伝えてなおそれなら今から迫撃砲の標的本部に変えろ!」 「あの、そのことなんですが」 銃声を掻き消し、迫撃砲の砲声さえ子供だましに聞こえるような大音が三つ。 対岸に向かって何かが飛翔し、着弾。上がった火柱が瞬時に数百人を肉片にする。 キュラキュラとキャタピラーを軋ませながら、三台の十式戦車が姿を表した。 「第三隊が先ほど無事に到着しまして」 「………先に言えアホ」 通信兵のメットをコツンと叩いてから、周囲を見る。 「これより96式装甲車で渡河する!総員乗車!」 「了解!」 重なる靴音にさらに被せるようにして、今度は重機関銃が咆哮した。
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