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いつもの様に病室を訪れると、
いつもの様に彼女が笑顔で待っていた。
「遅くなってわりぃな」
「ううん。逢えるだけだって嬉しいもの」
他愛のない会話をして、笑って。
こうなってからもう、半年になる。
彼女の体は確実に病に蝕まれて、見る見るうちに痩せ細ってしまった。
笑顔を見るたび、胸が苦しくなる。
「いつも…ごめんね」
「え?」
「気を遣わせちゃって」
「何言ってんだよ。俺が来たくてここに来てんだから、そんなこと言うなよ」
「でも、本当にありがとう」
茜色に染まる白い部屋で、俺は彼女を壊さないように抱き締めた。
何だか不安に心が蝕まれていく。
その夜のことだった。
彼女がこの世消えてしまったのは。
ついさっきまで、この腕のなかにいたのに。
彼女の親から渡された、遺言めいた手紙には、ただ一言
大好きでした
と書いてあった。
もう過去形にしろってか?
そんなの無理に決まってる。
むしろ、一生過去形になんて出来ない気がする。
涙が
止まらないよ
終
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