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「女のあたしも思うわ‥‥みくるちゃんは可愛いってね。彼女に出来るものならしてみたいわ」
「俺もそう思うぞ」と言えるような状況ではなかった。さっきまであんなに勢いがあったハルヒが急にしおれてしまい、このなんとも言えぬまるで恋する乙女のような情緒不安定さがハルヒにもあったということは、とても筆舌しがたい困惑を俺の中で渦を巻かせている。
「‥‥なあハルヒ。仮にそうだとしよう。だとしてもなんで俺がハルヒに気を使わなくちゃならないんだ?」
「やっぱりみくるちゃんが好きなのね‥‥」
「仮の話だ」
「だって‥‥あんた忘れたの? 団内の恋愛は禁止じゃない」
知らなかった。そうだったか?
「そうよ‥‥」
ハルヒは俺から手を離し、相変わらず俯いたまま重い足取りで窓へと歩みよった。外から室内へと夕暮れの光が差し込んでいたが、ハルヒの窓の向こうを見る様はまるで雨を眺めているかのようだ。そして窓に反射して見えるハルヒの顔は切なさが垣間見えた。
「いいわよ、別に。特別に許可してあげる。他の誰が何と言おうとあたしが許してあげるわ‥‥」
‥‥と、ハルヒは言ったきりこちらに振り返りもせず黙ったまま景色を眺めていた。おい、こんな展開になるなんて誰も考えちゃいなかったぞ。何故二言三言の会話の間に俺が朝比奈さんを好きということになっている。そりゃまあ好きに違いないが、そう、俗に言うラブではなくライクというやつだ。それに例えラブでもお前が認めたところで朝比奈さんが認めないだろうよ。なんつったて未来人だしな。まあ他にも要因はあるが。
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