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長門はちゃんと待っていてくれていた。もちろんマンションの外で。
「長門」
「状況は把握している」
「そうか」
長門が俺の隣へやってきたので、後ろに乗るよう指で合図した。周りが暗いせいか長門の瞳の色はよりブラックさが増していたが、そんな中でも本当に乗っていいのか訪ねるような礼儀正しい輝きは失っていなかった。もちろん、いいとも。
長門を乗っけ、俺は学校へと全速力で向かう。真っ暗な道の中、電灯の明かりってやっぱり大事なんだなと思いながらも俺は自転車の回転にともない光る心許ないランプを頼りに道を進んでいった。まあ車はこないから大丈夫だろう。思い切って車道へ出てみる。とは言っても、本来自転車は車道を通らなきゃならないんだけどな。
「‥‥‥‥こうなることは避けられなかった」
まるで重力を感じない長門がそう呟いたのが聞こえた。自転車の漕ぐ音以外はそれしかなかった。
「どういうことだ」
「貴方が涼宮ハルヒに好意を伝えていても、伝えることがなかったとしても、遅かれ早かれ必ずこうなっていた」
「そりゃ、なんでだ」
今まで長門の無機質さに安心したことは幾度もあったが、その返答だけは無機質さが余計に不安を煽った。
「何故なら、」
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