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「この情報爆発を起こしたのは、涼宮ハルヒではないから」
キキーッと自転車が唸りを上げて止まる。坂道だ。
「長門、それはい‥‥」
「上って」
「いや、だがな」
「大丈夫」
大丈夫、か。俺は長門を自転車に乗せたまま長い長い坂道を走ることにした。朝かったるく上ってくるのが嘘のようだ。電動自転車よりずっと楽に足が動く。
「‥‥‥誰だ」
「‥‥‥」
「今回のこの世界征服みたいなのを企んでいるのは、一体誰なんだ」
「言えない」
言えない? 言えないってなんだ。言わない、じゃなくてか。
「‥‥‥‥‥」
自転車が学校に向かうにつれて、俺の足取りは重力を取り戻したかのように重くなっていった。俺の告白は本当に関係なかった、それが確かになったというのに。
「長門の親玉が言うの禁止してるのか?」
「‥‥‥‥」
これも駄目か。首を縦か横かに振ってくれるだけでいいのに。
それから少しの間があったが、長門のおかげでどうにか早めに学校の校門前へ来れた。まだ古泉達は来てないようだ。
「入れない、か」
相変わらず寒天のような壁が俺の手の行く手は阻む。長門も興味を持ったのか片手を壁へとくっつける。反応は俺と同じだった。
「入れそうか?」
ふるふると、微かに首を横に振る長門。
良かったな古泉。お前の専売特許その1は守られたようだぜ。
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