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――瞬間に、たちまちに地面が大きく揺れだした。突然の揺れに一瞬だけ体勢を崩しかけ、側にあった一本の木にしがみついて立て直した。
「っ……これは……」
やがて地震はピタリと止んだ。暫く唖然としてると、急に瞳から強烈な光を受けて目を瞑った。
「なっ……」
自分が先程受けた強い光。それは、太陽の陽射しであった。
夜が明けるにはまだまだ時間がある。それなのに地震が止んだと同時に夜が明けだしたのだ。
そして更に彼は小屋から離れ、林の中を駆け出し始めた。
奥へ、奥へ…更に奥へと。
そしてある場所へ来た途端、薬売りは走る足をピタッと止めさせた。
「………やはり…」
そう呟いた彼の目の前には、怪我をしたお鶴の姿があった。
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