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「……今日は随分機嫌が悪いのね」
「大丈夫だよ。もう少しで彼がここに運ばれてくる…そうしたらきっと機嫌が良くなるさ」
「そうね」
「――成程…そうでしたか……」
「「!!」」
襖越しからの薬売りの声。二人は思わず目を見開いて振り返った。
刹那、襖は大きく開かれた。
「な…な…何故なのじゃ…何故……」
「……すいません…明正様、節乃様……」
薬売りの後ろから、今にも泣き出しそうな顔で彼女が現れてきた。
「お…お前……」
「すいません……」
とうとう堪えきれず、女はその場に伏せて泣き崩れてしまった。しかし薬売りはそんな彼女にも目もくれず、真っ直ぐと神楽がいる簾へと足を運んで行く。
瞬間、二人は瞬く間に顔色を変え始めた。
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