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「すいませんね…神楽はあまり人と会うのは……」
「そうですか」
「でも、気紛れで人を呼ぶ事もありますよ」
ほぅ…と目を細めた。まるで、好機を狙う獣の如く。
「本当に自慢の娘でありますよ。神楽を是非我が嫁にとしつこく迫る人もいました」
「なるほど。どういった感じだったので?」
興味深そうに薬売りが尋ねると、明正はその時の経緯を語ってくれた。
「婿になりたいと言って名乗り出たのが五人程いましてね…娘に相談してみたら、珍しい貢ぎ物を持ってきて気に入ったら婿にしてあげると……」
「で、彼らは一体何を持ってきたので?」
「一人目は、とても綺麗で娘に似合いそうな真っ赤な着物を持ってきてくれました。その着物は最高級の糸で紬、最高級の装飾で飾られた…滅多にお目にかかる事のない着物でした」
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