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すっかり薬売りと話しをして気を良くした明正と節乃。
不意に…。薬売りの傍らに置かさってある一つの大きな目玉模様が施された薬箱が、カタタ…と音を立てた。
その音が聞こえたのかそうじゃないのか、視線をそっちに向けず、未だに話し込む二人を眺めている。
いや、そもそも分かっていたからそちらに視線を向けなかったのかもしれない。
「……節乃様。明正様」
ふと、障子越しから一人の若い女性の声がした。
「あらいけない。すっかり話しに夢中になってたみたいね…ホホ」
「もうこんな時間か…。すまんね、態々老人の話しに付き合って貰って」
「いえ、いえ。此方も楽しかったですよ」
変わらぬ表情、変わらぬ口調で答えれば二人の老夫婦は微笑みながら部屋へ出て行くのだった。
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