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女はお茶を汲んで薬売りに受け渡す。
「どうぞ」
「どうも」
薬売りは渡されたお茶を啜り、そして箸を掴んでご飯を取って口に運ぶ。しかし、彼は少しだけ口に付けただけで、すぐに箸ごとご飯を椀の上に乗せて戻してしまった。
「……お食べに、ならないので?」
何故か微かに焦りの色を見せる女。それを薬売りは鋭い瞳で睨み付け、
「とても…客を歓迎するような振る舞いではない、ですね…客人相手に毒入りのお膳を出すのは、どうかと……」
みるみる女の顔が真っ青になっていくのが分かる。
身体も小刻みに震えだし、徐々に徐々に後ろへ後退していく。
「お…お許しください…お許しください…」
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