穢れたロマンチスト

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 瞼を上げる。  ランダム再生にしているから、  流れが滅茶苦茶な曲順に  瞼を上げざるをえなかった。  プレイヤーを操作して、  好きな歌を探す。  綺麗な詩を探す。  あと、まだあと二時間ある。  夜はあと二時間。  煙草がない。  禁煙しようか。  煙草は何のために吸うのだろう。  自傷行為?  私はそうかもしれない。  早く寿命よなくなれば良い。  こんなこと言っても  誰も反応してくれないのよな。  だって、私には可哀想なエピソードも  何もない。  ただ自分で不快に向かって進むだけ。  「好きな人も、もうどうでも良いし」  ソレは好きな人だと言えるのだろうか  と自分で言っておきながら苦笑いする。  ああ、どうでも良いよ。  今なら全てのものを捨ててしまっても  構わない気がする。  なんていっても、価値あるものなんて  私は持って居ないけれど。  深く深く切れたなら。  剃刀を、  切るたびに新しいものに替えて。  抉って、  血の飛沫に塗れながら、  痛みに顔を歪め死に恐怖する私を。  そんな私を  間近に感じることができたならば  私は幸せだろう。  今が幸せなのに、動く気力のない私は  ただ生きているだけだ。  生きることをこんなに  放棄したがっているのに死なないのは  面倒なだけだ。  生きたい、と言葉に出すのは  とても難しい。  生きたい、と本心では  思っているはずだと人間が言うのを  私は聞く。  そうだろうか、と思う。  私は意固地になっているだけ  だろうかと考える。  けれど答えは出てこない。  ただただしっくりこない言葉を、  口に出すのは躊躇われる。  躊躇う言葉をどうして  確信を持って発せようか。  
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