明白な答え合わせ

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 甘ったれた思考を、無邪気と呼ぶならば  私はまさしく無邪気だったんだろう  「お前は、私なんだろう。未来の」  「そうだよ、未来のお前だよ。  過去の私」  「どうして、どうしてそう、  なってしまっ――」  「どうして?笑わせるな。  それはお前がこれから、選ぶ道が  私に繋がっているからだろうが。  私は私に責任も持たずに、  こうやって生きてきた。  もう、いいじゃないか。どうだって。  月への道、だと?  そんなの世迷い事だと、  お前だってわかっているくせに」  ふ、と手元を見ると  私にも、刃物が握らされていた。  赤い、メスだった。  べっとりと、  液体の付着したメスだった。  私はそれを、見て口元を緩める。  「この世界から離脱する力も  希望なんてのも、明日を描く想像力も  なんも、残っちゃいないんだ。  私には――未来であり今の私には、  そんなものもう残っちゃいない。  こうやって日々を浪費して  無駄に生きているだけのウジ蟲さ。  ゴミにさえなれない  死ねば焼かれる身なんだ。  土の栄養にさえ、なることはない。  海の魚に食われることもなく、  私は普通に死ぬんだろうね」  だが、と私は言う。  「だが、一つだけ希望を見出すならば  なあお前。それで私を刺してみろよ」  これが夢ならば  これが幻ならば  けれど  それでもこれを現実だと仮定して、  私は今私と対峙しているのだとしたら。  
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