メリーゴー

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 薬を食べながら、電話をする私は  通話相手の戯言を聞き流しながら  酒をあおった。  つまみは安定剤  こうしたら、  記憶が消えてくれることを  私は知っていた。  いけないことだと  人に話したら咎められるので、  私は私だけが知る行為をこうやって、  繰るのだ。  真夜中の、  他人の関与に私は耐えられない  愚か者だった。  ――愛の言葉を囁かれても  何も感じないのは私が不感症だからに  違いない  ふらふらしてきたところで、  くらくら好くなってきたところで、  私はカッターを取り出す。  赤い筆箱から、ジッパーを下ろして  カチカチと刃を出す。  肩で携帯電話を耳と挟み、  器用に左腕を切りつけた。  通話相手は知らないだろう。  傷つける行為を、  どうやって知りえようか。  私のストーカーだったならば、  まだしも。  でも、だって、だから。  言い訳を思いつけないまでに  零に近づいている思考に  首を振れば目眩がした。  指先が、  普段から貧血気味なのに、  指先が冷えてゆく。  ――気持ち悪いのに  どうして赤い液体が私を這うのか  知らなかった。  私の中を巡り、ドクドクと脈打って  私を生かしているのか  理解できなかった。  生きたいとか、生きてとか  寂しいとか、悲しいとか  私は知らない。  否、  知らないとは言い切れないが  今の私にはそんなの  知ったことではない。  ただ、煩わしいものから逃げたくて  逃げたくて酒と薬で  イってしまった回路に、  また新たな混乱を  与えているだけなのだ。  この行為の意味も、  よくわからないままに続けられていて  
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