明白な答え合わせ

8/8
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
 「楽に、死なせてはくれないんだな」  「私は知っているよ。  悪いのは、世界なんかじゃないって」  そんなの、  「この世に生まれようと、  頑張ってしまったことがそもそもの  私とお前の、間違いだったな」  もう声は出ないはずなのに  意識も飛んでしまえるほどの痛みを、  負っているはずの私はメスを  振り上げる。  「せめてお前だけは楽に死ねよ」  月に行けないのは私が地球人だからだ。  月に行けないのは私達が  月で生まれなかったからだ。  望まれないからじゃない。  だから月は悪くない。  この世界も、あの人らも。  私を傷つけたあいつらも。  平等に悪くなんかない。  悪いのは私だ。全て私が悪かった。  父親と呼んだ人間の精巣から  母親と呼んだ人間の子宮へと  私は我武者羅に突っ込んで、  そして生まれてしまった。  きっとその時初めて知ったんだろう。  これにはなんの意味だって  なかったんだって。  全ては自業自得で  世界を傷つけたいなんて  八つ当たりも良いところで  だからこれは正解なんだよ。  血飛沫が私の顔を濡らす。  生暖かな脳髄が手に触れる。  気持ちが悪くて、吐き気がして  それでもぐちゃぐちゃに、  私は私の頭を切り刻んだ。  死んでしまえるように  脳が停止すれば、  感覚さえ覚えられない。  まだ小さな私の手は  私の腹を抉るのをやめない。  視界がぶれるのはどうしてだろう。  ああ、泣いているのか。  これにも、意味はないんだろう。  もし生まれ変わりがあるとしたら  また私が私を殺してやろう。  きっと答え合わせは  永遠に変わらない数式として  繰り返されるから。  だから大丈夫  答えは私が持っている。  これがもし夢でも、目覚めたら  真っ先に、ベランダから  飛び降りてやるつもりだ。  ...明白な答え合わせend
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!